おみがわこども園の民営化は20年間で約19.6億円の負担削減効果? 年間約9,800万円削減と試算

おみがわこども園民営化子育て

みなさんこんにちは。香取市議会議員の加藤裕太です。

 

2022年3月18日、香取市がホームページを更新して、4月1日からの、おみがわこども園の民営化について説明しています。

 

 

おみがわこども園の民営化については、議会でもかなり多く取り上げられてきたこともあり、出てきた論点についても、まとめられています。

 

議会の中での議論では、言葉の定義やデータなどが明確になっていないところがあり、残念ながら議論が噛み合っていないのではないか、と思われる場面も見られました。

 

答弁する側も、質問する側も、議論の前提として言葉の定義や詳細なデータを示しながら議論をしていただきたいと思いますし、市議会議員になってからずっとお願いしているのですが、特に事業を推進しようとする香取市側は、事業の計画当初から事業計画やデータを示して丁寧に説明をしていく必要があると考えます。

 

例えばある程度の規模の民間企業で何か事業を進めていく際には、データや事例を集めて、計画書やプレゼンテーションの資料を作成し、上司や役員に説明して承認してもらって進める、といったことをすると思います。

 

ある程度の組織の大きさを持つ市の事業については、内部ではそういったことが行われているのかもしれませんが、議会への説明が行われる際にももう少し説明に力を入れていただきたいと思いますし、それと同時に、議会の方でもそういった説明では納得して議決できないので、しっかり説明をしてほしい、という態度を示していくことが重要だと考えます。

 

 

それでは、ホームページの論点から、議会での議論も含めて気になったところをピックアップしてみようと思います。

 

最初に断っておきますが、こういったことを書くと、選挙などに絡めて色々と仰りたくなる方もいらっしゃるかもしれませんが、かとう裕太はそれぞれの施策や事業に会派の名前の通り是々非々で考え、判断をしています。

 

香取市の市民のみなさんにとっていいのはどういったことか、そして香取市にとっていいのはどういったことか、ということをいろいろな視点、時間軸で考えて結論を出しています。

 

もちろん、自分が全て正しいとは全く思っていませんし、間違えることもたくさんあると思いますが、だからこそいろいろな方々からの意見を伺って、考えて、判断をすることができるのだと考えます。

 

今後もそれぞれの施策に是々非々で臨んで参りたいと思います。

 

民営化にはどんなメリットがありますか

 民間のノウハウを生かした教育・保育の充実や独自サービスの提供が期待できます。
また、保護者負担の軽減につながる取り組みなど、保護者ニーズへの柔軟な対応につながります。(例:完全給食、各種教室、園児の安全管理(登降園システム)、HPの活用した情報発信、持参物の軽減 など)
公立の保育施設では、どの施設においても同じ品質の保育サービスを提供できるよう配慮して運営を行っています。半面、施設独自の保育展開が進みにくいこと、また、予算確保や行政組織としての所定の手続きに時間を要するなど、保育サービスの向上や保護者ニーズへの対応に関する柔軟性や迅速性は民間運営に分があると言えます。民間のこども園となることで、保護者ニーズへの柔軟で迅速な対応が期待できるようになります。

もちろん、公立の保育施設も質の高い保育サービスを提供しようと頑張っていますが、柔軟さや独自サービスの提供などの観点も鑑みますと、やはり民間の方が保育サービスを充実させやすいのではないかと考えます。

 

質の高い保育サービスや独自のサービスを提供している、ということでメディアで特集される保育施設のほとんどは私の知る限り民間事業者が運営している施設ですので、そういったところで特色を出しやすいのかなと考えます。

 

また、現在の香取市の保育施設の定員を見てみますと、公立が665人、私立が968人と、私立の保育施設の定員の方が多い状況ですので、今後も民間の保育サービスを利用される方々が増えてくるという傾向になっていくのではないかと考えます。

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民間移管することで、どれくらい財政上の効果が得られますか

 年間約9,800万円の経費削減効果が得られます。
市が直接運営する場合の人件費及び施設の運用・保全に係る経費と国県からの交付金等を差引した市が実質負担する経費は、年間約1億2,400万円。民間に移管した以降に市が実質負担する事業対象経費は、年間約2,600万円で、その差、年間約9,800万円の経費削減効果が得られ、協定期間の20年間では約19億6,000万円の経費削減効果が見込まれます。このほか、建物や設備の老朽化に伴う修繕費や更新費等について市がその負担をしなくて済むようになります。(運営法人が、国の補助制度を活用して大規模修繕等を行った場合は、所定の割合で市の負担が生じます。)

当初議会での答弁では、民営化することで年間約4,800万円程度の経費削減が見込める試算だとのことでした。

 

年間4,800万円の削減でも、民営化による保育サービスの向上や、施設が老朽化した際の大規模修繕などの経費がかからなくなることを考えると、十分な削減だと考えていましたが、今回詳細に試算をした結果、年間9,800万円、20年間で19億6,000万円の削減という大きな数字になりましたので、大規模修繕の負担減なども併せて、民営化の効果というものは、さらに大きくなりそうです。

 

もちろん、市の試算をそのまま受け取ることはしませんが、かなり保守的に見積もったとしても、大きな財政削減効果となりそうです。

 

繰り返しになりますが、こういった試算等は議会で審議する際に必要なものであるので、事前に出していただくのが当然だと思います。

 

今回議論が錯綜したのも、こういったところに原因があると考えますので、改善していただきたいと思います。

 

民営化となり職員が変わった場合、在籍している児童は不安になりませんか

 園児や保護者の不安を解消できるよう配慮しています。
園児の不安解消のため、運営事業者の職員が、運営移行前からおみがわこども園に入り、市の職員と一緒に保育を行う合同保育をしています。また、運営移行後は、市の職員数名がこども園に残り、1年程度の引継ぎ保育を行うことを予定しています。
また、現在おみがわこども園に勤務する会計年度任用職員は、子どもたちや施設のことも良く把握しています。市としては、多くの会計年度任用職員の方に民営化された保育施設に残っていただくため清水福祉会に雇用を働きかけ、半数以上の会計年度任用職員が移行後もおみがわこども園で保育にあたることが決定しています。

民営化される際には、お子さん方や保護者の方々など、利用されている方々は不安に思うことだと思います。

 

民営化をするにあたっては、現在利用されている方々の不安を解消していくことが、一番大事なところだと考えますので、昨年の全員協議会での説明の時点から、みなさんが不安に思わないように丁寧な説明をしていただきたい、と強く要望してきたところです。

 

環境が変わる際、変化が生じる際にはいろいろな方面で影響が出ることも考えられますので、引き継ぎ保育も含め、利用される方々の不安を解消できるようにしていっていただきたいと思います。

 

なぜ民間法人へ市有財産を無償譲渡するのですか

 少子化が加速する中にあっても、おみがわこども園が永続的に優良な教育・保育を提供していくことが重要な点となります。このため、様々な経営リスクを引き継ぐ事情を踏まえ、施設の無償譲渡により、移管先法人へのインセンティブを付与するとともに、移管後も協定に基づいた運営がされているか、市が指導監督し、教育・保育の質の担保を図ります。
また、運営法人である清水福祉会が、自らの理念に基づく教育・保育を実施するにあたり、施設の改修等を柔軟・迅速に進めるには、施設の所有を運営法人へ譲渡することが必要です。 さらに、建物や設備の老朽化に伴う修繕費や更新費等について市が負担をしなくて済むようになります。(運営法人が、国の補助制度を活用して大規模修繕等を行った場合は、所定の割合で市の負担が生じます。)

なぜ無償譲渡なのか、といったところは意見が分かれやすいところだと思います。

 

おみがわこども園の施設の無償譲渡については、議会の採決でも11対10で可決となったように、いろいろな意見があり、例えば有償での譲渡や貸与、無償貸与なども考えられるところだと思います。

 

市の説明は上記の通りですが、かとう裕太なりの考えでは、①参入できる事業者を確保すること、②事業者の負担を軽減して、その分をお子さん方へのサービスの充実や経営継続にあててもらうこと、③大規模修繕など市の負担を減らすこと、が無償譲渡とする理由だと考えます。

 

①については、有償譲渡・貸与の場合、参入できる事業者がかなり限られてきてしまい、誰も応募しないことも考えられるので、広く事業者を募集するためには、無償譲渡もしくはかなり廉価な有償譲渡・貸与、という方法を取る必要があると考えます。

 

②については、民間事業者の負担が軽減されますので、その分が利用されるお子さん方や保護者の方々へのサービスの充実にあてられる余裕になると思います。

 

また、負担が軽減された分は、こども園の運営を長く継続していくためにも活用できますし、こども園で働かれる方々の待遇改善にもあてることができると思います(ここは是非実現していただきたいです)。

 

③については、現在はまだ大規模な修繕は必要ないと思いますが、今後年数が経過してくれば、確実に大規模修繕が必要になってきます。

 

施設を市が所有していれば、大規模修繕の費用は当然市が負担することになりますが、民間事業者が施設を所有していれば、その事業者が大規模修繕の費用を負担することになります。

 

ただ、民間事業者であれば、大規模修繕をする際には、国等の補助金を活用して負担を少なくしながら修繕ができるようになりますので、その際に一部市が負担する部分を考慮しても、市が所有しているよりもかなり負担を軽減することができます。

 

以上の理由から、施設は無償譲渡(もしくはかなり廉価な有償譲渡)とする必要があると考えます。

 

財産(施設)の無償譲渡の適法性について

 認定こども園法では、移管にあたって「市町村の設備等を無償若しくは時価よりも低い対価で貸し付け、または譲渡することができる」とされています。 また、「財産の無償譲渡」について、地方自治法の規定により令和3年度香取市議会12月定例会において議決をいただいており、今回の財産の無償譲渡は適法・適正なものとなります。

議会での議論で、無償譲渡は違法だ、という主張があったのですが、私の力ではその論理展開を追うことができませんでした。

 

いわゆる認定こども園法第34条4項によると、認定こども園の施設については、無償譲渡することができることになっています。

 

5項によると、無償譲渡等をする際には地方自治法237条から238条の5までの規定が適用されることになりますので、議会の議決が必要となることになります。

 

今回は令和3年12月議会で無償譲渡について議決されていますので、私には違法なところはないように思います。

 

また、おみがわこども園の無償譲渡と同じように、こども園の民営化と無償譲渡を行っている例は他にもあり、特に違法だという判例も見つけることができませんので、違法だという主張はなかなか難しいように感じます。

 

就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(認定こども園法)第34条

4項

市町村長は、公私連携法人が前項の規定による届出をした際に、当該公私連携法人が協定に基づき公私連携幼保連携型認定こども園における教育及び保育等を行うために設備の整備を必要とする場合には、当該協定に定めるところにより、当該公私連携法人に対し、当該設備を無償若しくは時価よりも低い対価で貸し付け、又は譲渡するものとする。

 

5項

前項の規定は、地方自治法第九十六条及び第二百三十七条から第二百三十八条の五までの規定の適用を妨げない。

 

地方自治法237条2項

第二百三十八条の四第一項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。

 

建設後5年しか経過していないこども園の施設を無償で譲渡することは、香取市の財産の損失になりませんか

 おみがわこども園は、関連法に基づき公私連携法人である清水福祉会へ移管後20年間、協定に基づいて香取市が積極的に運営に関与し、幼児教育・保育の拠点として「幼保連携型認定こども園」の社会的機能が維持・継続します。 市民の皆さんは、これまでどおり、おみがわこども園を利用できることから、同目的の「公益性」が確保されるため、無償譲渡により香取市に損失が生じることはありません。

議会での議論でも「損失」という言葉を使う方がいらっしゃいましたが、その定義が曖昧なまま議論が行われてしまったので、客観的に聞いていてすれ違っているな、と感じることが多かった論点です。

 

「損失」という言葉を使われる方々の主張としては、施設が無償譲渡されることで、香取市の持っている財産が減ってしまうから、「損失」なんだ、ということなのかなと思います。

 

百歩譲って無償譲渡それだけを切り取って捉えれば「損失」ということもできるのかもしれませんが、民営化及び無償譲渡をすることで得られる(対義語として)「利益」または「便益」の部分や、民営化後も引き続き質の高い保育サービスが提供されることを完全に無視してしまうのは、あまり客観的な見方ではないと思います。

 

「便益」については上記で触れましたが、民営化と無償譲渡でおみがわこども園が全く利用できなくなってしまうわけではないですし、利用者のみなさんにとっては、むしろ質の高い保育サービスや独自のサービスが受けられ、香取市にとっても、あくまでも試算ですが、年間9,800万円、20年間で19億6,000万円の費用が削減でき、今後の大規模修繕の費用もかからない、という「便益」が発生しますので、全体で見ると「損失」が発生するのではなく、「便益」が大きいと判断することができると考えます。

 

事業の効用・効果を考える際には、かかるコストと得られる便益を分析する、コストベネフィット分析(費用便益分析)をするのが一般的だと考えます。

 

もちろん、議員のみなさんもこういった分析をされた上で判断されていると思いますので、大きな「損失」が発生する、と主張されるのはかなり難しいのではないかと思います。

 

そもそも無償譲渡という行為で「損失」だけが発生する、というように考えてしまうと、行政の行為のほとんどは「損失」ということになってしまいます。

 

例えば住民票の写しを交付するのも用紙をあげてしまうので「損失」ですし、図書館などの公共施設を運営するのもサービスを無償またはかなり廉価で提供しているため「損失」となってしまいますので、そう捉えるのはかなり難しいと考えます。

 

こども園の整備にかけた市の借金がまだ12億円以上も残っているのに、なぜ施設を民間に無償で譲渡するのでしょうか

 おみがわこども園は、譲渡後も市民のための施設として存続し、将来にわたり長く使い続ける社会資本です。借金で社会資本を整備するのは「その施設の便益を受ける将来の市民にも負担していただく」という考え方ですので、世代間の公平を図るためにも、引き続き計画的に返済していきます。

これは質問に一見すると質問と回答が対応していないようにも思えます。

 

パッと見てこの質問の趣旨がどこにあるのか、はっきりしないので、場合を分けて考えてみますが、質問の趣旨が、①なぜ民間法人へ市有財産を無償譲渡するのか、ということでしたら、少し前の質問とそれに対する回答が対応することになるのかなと思います。

 

そうではなくて、質問の趣旨が、②なぜ民営化後も市が市債等を償還していかなければならないのか、ということであれば、上記の市の解答が対応することになるのかなと思います。

 

付け加えると、おみがわこども園の施設整備の分の市債残高は令和3年度末で約12億円となりますが、その多くに合併特例債等があてられていますので、香取市が返済していく額としては、財源内訳にもよりますが、12億円よりもずっと少なく、約3割程度になっていくのではないかと思います。

 

もちろん、議会での議論でも出てきたように、合併特例債で返済額が少ないとはいっても、その元は国からの財源になります。

 

ただ、借金が12億もある、ということを強調されるのであれば、他の事業で国や県からの補助金を活用してもっとやってほしい、という主張をすることが、一貫性を欠いて難しくなってしまうのではないかと感じています。

 

 

 

おみがわこども園の施設の無償譲渡について、市議会で採決した結果は、11対10で可決となりました。

 

かとう裕太は、以上書いてきた理由から、賛成をいたしました。

 

もちろん、おみがわこども園を利用される方々、市民のみなさん、香取市の将来のためにとって何がいいのか、ということを考えた上での判断です。

 

もちろん、反対される方々がいらっしゃるのは理解していますし、議論がなされることはとてもいいことだと思います。

 

ただ、議論を進めていく際には、主張の根拠となるものや詳しいデータ、使う言葉の定義の明確化など、議論の土台を確りとつくっていくことが重要だと考えます。

 

今回の一連の議論の中には、そういったものが欠けてしまい、答弁する側、質問する側の双方が冷静さを欠いてしまった部分が一部あったのが大変残念です。

 

冷静に、確りと建設的な議論をしていかなければ、市民のみなさんのためになりませんし、香取市のためにもならないと思います。

 

自分がそういった議論ができているのかは、みなさんに判断してもらわなくてはわかりませんが、そういった議論ができるように、今後も精進して参りたいと思います。

香取市議会議員 かとう裕太

1987年香取市佐原生まれ。

水郷保育所、佐原小、佐原中、八千代松陰高校(野球部)、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、石油元売会社入社。
退社後、佐原駅前の加藤瓦店。

京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了。
加藤裕太行政書士事務所代表。
宅地建物取引士・基本情報技術者・国内旅行業務取扱管理者。

2012年、香取市総合計画(後期基本計画)審議会委員として香取市のグランドデザインづくりにかかわる。

佐原青年会議所での活動や行政書士の仕事を通じて、行政に若い世代の声を届ける必要性を痛感。

2018年12月の香取市議会議員選挙に立候補。
1930票をいただき、初当選。
2022年12月の香取市議会議員選挙では歴代最多の2411票で当選。
香取市議会議員(2期)。

若い世代の意見を反映できるまちづくりを目指し活動中。

成田国際空港対策特別委員会委員長・総務政策常任委員会副委員長。

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