香取市議会生活経済建設常任委員会行政視察報告書(2019年10月23日・24日 新潟県新発田市・胎内市)を作成いたしました

20191023新潟県新発田市役所企業

2019102324香取市議会生活経済建設常任委員会行政視察

みなさんこんばんは。香取市議会議員の加藤裕太です。

 

2019年10月23日水曜日、24日木曜日に、香取市議会生活経済建設常任委員会の行政視察を行いました。

今回は新潟県新発田市の新発田市役所、新潟県胎内市の新潟食料農業大学を視察させていただきました。

対応していただいたみなさん、ありがとうございました。

 

学んだことを香取市の市政に活かせるよう、活動して参ります。

 

行政視察の報告書を作成いたしましたので、ご覧いただけましたら幸いです。

2019年10月生活経済建設常任委員会視察報告書(PDF)

 

以下に内容を記しておきます。

 

生活経済建設常任委員会 視察報告書

文責:加藤裕太

1 視察日程

2019年10月23日(水曜日)〜24日(木曜日)

 

2 視察先及び内容

(1)視察先

①新潟県新発田市(10月23日)

②新潟県胎内市 新潟食料農業大学(10月24日)

(2)内容

①食の循環によるまちづくり推進計画について

②大規模な事業所が閉鎖された後の建物を活用した私立農業大学の開学について

 

3 視察参加者

委員長:久保木清司 副委員長:内山勝己

委員:田山一夫、鈴木聖二、木村博、井上徹、加藤裕太

 

4 視察先概要

①新潟県新発田市

(1)人口  

97,196人(2019年9月末現在)

(2)世帯数 

36,683世帯(2019年9月末現在)

(3)面積 

533.10㎢

(4)概要  

 昭和22年に市制を施行してから昭和に3度の合併、平成に入って2度の合併を経て現在に至る。北西には白砂青松と形容される海岸が広がり、南東の山岳地帯には豊かな自然景観に恵まれた磐梯朝日国立公園、胎内ニ王子県立自然公園がある。かつて東洋一といわれた堤桜を有する加治川の水系によって潤う肥沃な土地が広がっており、県内有数のコシヒカリの産地。米の農業産出額は香取市の83億円を超える100億7,000万円。城下町の歴史と文化、全国的にも有名な月岡温泉、山から海までの豊かな自然などの魅力を持つ。

 

②新潟県胎内市

(1)人口  

29,037人(2019年9月末現在)

(2)世帯数 

10,798戸(2019年9月末現在)

(3)面積  

264.89㎢

(4)概要

2005年9月に旧中条町と旧黒川村が合併して誕生。新潟県の北東部にあり、新潟市から北へ約40kmに位置。飯豊連峰を源とする胎内川を中心に形成された市域は東西に細長く、上流部は渓谷、中流部の扇状地は優良農地、海岸線には砂丘が広がる。農業産出額は米の35億円、鶏卵33億6,000万円と続く。胎内産のブドウのみを使用した市営のワイナリーで醸造された胎内高原ワインなども特産品。2018年4月に新潟食料農業大学が開学。

 

5 視察内容

①新潟県新発田市

(1)視察目的

新発田市が10年以上継続してきた食の循環によるまちづくりを学び、人間の生活の基盤である食や、香取市の基幹産業である農業をベースとしたまちづくりの可能性を探る。

(2)視察訪問先

新潟県新発田市 新発田市役所(新発田駅よりコミュニティバスで移動)

20191023新潟県新発田市役所

(3)説明者

新発田市議会事務局長、みらい創造課企画政策係、農林水産課農業経営推進係

(4)事業概要

食の循環によるまちづくりは、市民、事業者、市が毎日の暮らしの中で、「食」の大切さを意識し、「食の循環」におけるそれぞれの役割を理解し合い、行動することで、「食の循環」を形成し、その循環をまちづくりに活かしていこうというもの。

食の循環とは、肥料づくり・土地づくり、栽培・収穫、加工、販売・購入、調理、食事、残渣(ざんさ)処理からなる家庭の連鎖であるとされている。

食の循環によるまちづくりを進め、最終的には健康で心豊かな人材の育成、産業の発展、環境との調和、まちのにぎわい等の地域の活性化と市民生活の質の向上をめざし、条例の制定や各種取組みを実施。市民、事業者、市のそれぞれに役割を持たせている。

これまで10年ほど取り組んできており、令和2年度には現在の計画期間が終了するため、令和3年度からは新たに見直された計画が開始される予定。

以下のような施策を基本的施策として行い、40項目以上の目標値を定めている。

・産業の発展:安定的な食料供給体制を整備し、消費者を意識した食の安全性を確保

ex.地場産農産物や加工品などの利用、地産地消、地消地産、トレーサビリティ確保

・健康及び生きがいの増進:心身ともに健康で生きがいが持てる質の高い生活を確保

ex.望ましい食習慣を身に付ける

・教育及び伝承:自立して生きていくために必要な力を身に付けた将来を担う人材育成

ex.食文化の継承、家族で調理、学校での食育

・環境の保全:有機資源の循環による自然環境と農地を保全

ex.調理くずや食べ残しの分別、堆肥を使った土作り、残渣処理

・観光及び交流:もてなしの心で交流し、誇りをもって新発田の魅力を発信

ex.名産品のアスパラメインのイベント、規格外のアスパラピューレを使った名物開発、

普及・啓発活動として有名人を招いたリレートークを実施

 

(5)実施状況

平成21年 食の循環によるまちづくり推進計画開始

平成28年 見直された5年計画が始動

令和3年  新しい4年計画が始動予定

 

(6)質疑

Q.食の循環に注目したきっかけや経緯は?

A.平成17年に新発田市産の米から基準値を超えるカドミウムが検出された。これを機に食からのまちづくりが重要だと考え、平成21年に条例を制定した

 

Q.食の循環によるまちづくりのメリットは?

A.実感しているのは食育プランの浸透。中学校まで作る・食べる・返す・育てる、が浸透

Q.食の循環確立のために、どこに労力、コストがかかったか?難しかったところは?

A.普及・啓発が難しい。学校で触れるので子どもたちは知っていても大人は知らず、認知度は高くない。対策としてリレートーク(講演会)で有名人を招いて普及活動を行った

 

Q.40項目ほど目標値があるが、この中でキーとなる指標は?

A.教育や食育面では成果が上がっていると感じる。今後は産業面で指標を達成したい

 

Q.食の循環のどの部分に力を入れているか?

A.残渣処理がないとサイクルが回らないという面もあるので、力を入れている

 

Q.面積が533.10㎢と香取市(262.35㎢)の倍ほどの広さがある。アスパラが名産品といっても地域によって温度差はないか?

A.13年イベントを続けてきて広がりつつあるが、高齢化で新たな産地が広がらず、生産量が減少している面もあるので、てこ入れしていきたい。面積については、新発田市は山地も多いということもある。

 

Q.補助などを行っている事業はあるのか?どれくらいの予算規模か?

A.アスパラ、いちご、おくらなどに補助金を出している。予算は500万円

 

Q.アスパラの生産量はなぜ減っているのか?

A.栽培に手間がかかるため、新規事業者はほぼない。人手とハウス等でお金もかかる

 

Q.お米の銘柄はコシヒカリが多いのか?飼料米は作っていないか?

A.ほとんどコシヒカリ。こしいぶきという早稲の品種もある。飼料米はほとんどない。

 

②新潟県胎内市

(1)視察目的

大規模な事業所が閉鎖された後の建物を活用した、食・農・ビジネスを一体的に学べる私立農業大学の誘致事例から、市内への人口流入施策や農業政策の参考となる部分を学ぶ

 

(2)視察訪問先

新潟県胎内市 新潟食料農業大学(中条駅よりデマンドタクシーで移動)

20191024新潟県胎内市新潟食料農業大学

(3)説明者

中井裕新潟食料農業大学副学長・大学事務局

 

(4)事業概要

2018年4月に食・農・ビジネスを一体的に学ぶことができる新潟食料農業大学が開学。116兆円の市場規模があると言われる食料産業を農林水産、製造、外食、流通、ビジネスといった多角的な視点から学ぶことができる大学を目指して設立された。新潟に拠点を置き、専門学校や大学を運営するNSGグループの中の大学として、1学年180人、最大で700人定員の規模でスタートした。現在はアグリ・フード・ビジネスの3つのコースを開設。食料産業をビジネスまで含めて一体的に学ぶことができる大学は、日本の単科大学では他にはないとのことであった。市や県、JA胎内市等の団体とも連携をしながら運営されている。

新潟食料農業大学は、胎内市にあったアデランスの大規模工場の跡地を活用している。

建物は内装をリニューアルした程度でそのまま利用し、一般的な大学とは少し違った独特な雰囲気のある校舎となっている。体育館も工場時代からあるものを活用している。校舎のすぐ近くには畑やビニールハウスなどが設置され、そこで農業の実習も行われている。

入学してくる学生は7割が普通高校出身で、農業高校出身者はそれほど多くない。また、理系だけでなく文系の学生もいるため、化学などの学習のサポートにも力を入れている。出身地については、1年目は新潟県周辺が多かったが、2年目は全国から入学者が集まってくるようになっている。千葉県や茨城県からも入学者があり、勉学や部活動に打ち込んでいる。

立地としては山や海に囲まれた不利な条件もあるが、3年目を迎えて次の入学者は定員の100%を目指している。卒業後の進路も、NSGグループの中にホテルや飲食店、酒造や農業を行っている法人があり、連携して卒業後の進路の選択肢も提供できるという。

 

(5)実施状況

平成30年4月 新潟食料農業大学開学

 

(6)質疑

Q.食や農業、ビジネス等を一体的に学べるという点で似ている大学はあるのか?

A.単科大学に限るとない

 

Q.工場跡地を活用しているとのことだが、何の工場だったのか?

A.アデランスの工場で、1,000人程度が働く規模だった

 

Q.施設の改修はどの程度行ったか?

A.主に内装しか改修していない。他は工場の時のまま利用している

 

Q.市内の若い世代の人口は?

A.市内の20代人口は1,300人程度。大学は定員を満たすと700人なので影響は大きい

 

Q.入学者の中で農業経験者はどれくらいの割合か?

A.農業高校出身者は10人程度。全体の7割が普通高校出身。学科は様々

 

Q.どういった学生の集め方をしているか?

A.オープンキャンパスや説明会、依頼されて出前授業などをしている。

 

Q.定員はどうなっているか?現在どれくらい充足しているか?

A.定員は1学年180人。1年目は55%、2年目は83%だった。3年目の目標は100%

6 所感

①新潟県新発田市 食の循環によるまちづくり推進計画について

食は人間の生活の根幹をなすものであり、そこに力を入れる食の循環によるまちづくりには共感できる。食の安心・安全の確保や健全な食習慣の習得、食文化の継承や食育の浸透、食・農業を観光へつなげるなど、食をベースにまちづくりをすることによって、市民のみなさんのニーズに応えることができる可能性があると感じた。特に、平成17年に新発田市産の米から基準値を超えるカドミウムが検出された事件を経て、市民のみなさんの食への関心は高いことが推察される。そのため、安心・安全な肥料や土作りから始まって、生産者の顔が見えるトレーサビリティの確保、小さい頃からの食育などによって、食の安心・安全の確保につながることは、市民のみなさんも求めていることだと考える。それを実現するために、今後も適宜見直されながら進められる計画が機能することを期待したい。

その一方、いくつか質問をした中で気になったのが、キーとなる重要な指標はどれか、といったことや、どの部分に力を入れているか、といった問いに対しての回答が個人的には明確でなかったように感じた。目標の達成度や達成するための優先順位のつけ方などに苦労されているのではないかと思うが、そういったことを改善して新たな計画に臨んでいただければと思う。

同じく農業が基幹産業の香取市においても上記のような食の安心・安全の確保や食・農業と観光の連携を推進していくことが重要な課題となるため、参考となる事例だと考える。

 

②新潟県胎内市 大規模な事業所閉鎖後の建物を活用した私立農業大学の開学について

2018年に開学したばかりの新潟食料農業大学は、工場跡地を活用した大学として、個性的な雰囲気を持っていると感じた。校舎は主に内装しか改修していないとのことで、所々に工場の面影が見えた。そういったところは大きな企業グループの中の大学として、コスト管理に長けているなと感じる。こういった遊休資産の活用方法もあるのだと参考になった。

現在は1、2年生しか在学していないが、最大で700人規模の大学となる予定で、胎内市の20代の人口が約1,300人だとすると、大学の誘致は人口や経済の面で大きなインパクトがあると考えられる。卒業後、胎内市にどれくらい残る方がいるのかは今後チェックしたい。

個人的には、食・農・ビジネスを一体的に学ぶということは、今後さらに重要性を増してくるのではないかと感じている。というのも、これまでも食と農は一体と考えられてきたが、これからはそれをビジネスにつなげる、収益化するという観点まで一体的に捉えて考えなければ、食・農の分野が働き手不足や後継者不足という危機を乗り越えられないかもしれないと考えるからだ。新しい大学なので、今後そういった人材を輩出されることを期待したい。

香取市において、すぐに大学を誘致するというのは難しいかもしれないが、遊休資産の活用等、そういった選択肢を選ぶ時の参考になると感じた。また、食・農の分野では同じ問題を抱えている。食・農・ビジネスを一体的に考えて施策を推進し、食・農を魅力あるものにすることが必要で、それがひいては経済活性化、人口流入に繋がるのではないかと考える。

タイトルとURLをコピーしました